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貞操権の侵害

貞操とは

貞操とは「正しいみさお」「性的純潔を守ること」などをいいます。
この価値観を「貞操観念」ともいいます。

貞操権とは

貞操権という用語には、次の2つの意味があります。

  1. 夫婦間の貞操権
  2. 性的意思決定の自由の権利

 1)夫婦間の貞操権
まず、夫婦は双方とも他の異性と性的関係を持たない義務(貞操義務)を負い、自分の配偶者に対して他の異性と肉体関係を持たないように要求する権利があります。
内縁関係の場合も「準婚姻関係」として婚姻している夫婦と同等に法的な保護を受けるため、貞操義務に違反した場合には、パートナーに対して損害賠償責任を負います。
また、婚約関係の場合においても「婚姻の予約」という契約が成立していると解されているため、婚姻し難い事由として婚約破棄とともに損害賠償を請求出来ます。

 2)「性的意思決定の自由」の権利
誰しもが、誰と肉体関係をもつかもたないか等を自分で決めることの出来る権利=「性的意思決定の自由」があります。
そのため、同意なく性的行為をされた場合や独身だと騙され性的関係を持った場合なども「性的意思決定の自由」の侵害として損害賠償請求が認められます。
裁判所が認める慰謝料の金額は、交際期間や妊娠・同棲の有無、知り合った経緯、その他、過失の有無や大小、等、様々な事情により異なります。

「性的意思決定の自由」の侵害に対する慰謝料

慰謝料請求が認められる場合

「性的意思決定の自由」の侵害で慰謝料の請求が認められるのは、以下の要件を満たす場合です。

  1. 相手が既婚者であるのに独身だと嘘をつき、または誤認させた
  2. 肉体関係またはそれに近い性的な行為があった
  3. 既婚者であると知っていたなら性的性行為に及んでいなかった

上記の他、性的合意が無いのに、または性的同意が出来ない状況下で、意思に反した肉体関係を持たされたという場合は「不同意性交罪」等の犯罪になる可能性もある重大な違法行為なので、当然に慰謝料請求することが出来ますが、その件については、本篇では説明を省きます。


「性的意思決定の自由」の侵害に対する慰謝料の判例
平成8年6月7日
(東京地裁)
慰謝料300万円
「男性が、他に交際している相手がいることを秘匿し、結婚等のための交際相手を紹介する結婚情報サービスを利用して知り合った、結婚願望のある女性に対し、「結婚に必要な条件を満たしたならば婚約や結婚について検討してもいい」などと結婚について期待を持たせて継続的に性的関係を持ち、結婚する意思がないにもかかわらず、4ヶ月にもわたり、あたかも結婚を検討しているかのように装う一方、婚約ないし結婚の承諾をすることを巧妙に避けながら長期間性的関係の継続を図るもので、幾多の言動から、交際の当初より、結婚できるかもしれないと誤信して付き合いを続け、その結果、初めて身籠った子の妊娠中絶手術をせざるをえなくなるなど、人生設計を大きく狂わすこととなったものであり、女性の人格権の侵害にあたる。」
平成17年1月27日
(東京地裁)
慰謝料550万円
「男性が、既婚者であることを秘匿して、風俗店で知り合った女性と「結婚を真剣に考えている。」などと言って交際し、男性は女性に生活費を交付する、男性の家族と面会させる、男性の子を2回妊娠し中絶させた後に出産をさせる、等、12年間にわたって性的関係を伴う交際を継続したことは、女性の人格権を継続的に侵害する行為である。」
平成19年8月29日
(東京地裁)
慰謝料500万円
「男性が、風俗店で知り合った女性に対し,自己が既婚者であることを一切告げることなく,将来の結婚を約束した上で,性的関係を伴う交際を長期間続け, 2度の妊娠中絶を経て,女性が自分の子を出産するや別れることを画策し,認知請求訴訟を提起されてはじめて子の認知をするに至ったものであり,女性は, 男性が独身で,いずれ婚姻できるものと信じて,20代後半から30代にかけての女性としての貴重な時期を被告のために捧げた上,子どもを出産するに 至ったものといえるのであって,既婚者であることを秘して性的関係を伴う交際を長期間継続したことは,将来の婚姻を信じて交際を続けてきた女性に対し、 人格権侵害の継続的不法行為を構成するものといわざるを得ない。」
平成19年9月21日
(東京地裁)
慰謝料250万円
「男性が、インターネット上の、独身者に結婚相手を紹介するお見合いサイトに独身と偽って登録し、そこで知り合った女性と交際を始め、結婚を前提とした交際であると信じた女性との間で、3年間近くにわたって肉体関係を伴う交際関係を継続した行為が不法行為を構成する。」
平成19年8月29日
(東京地裁)
慰謝料500万円
「男性が、既婚者であることを秘匿して、クラブの客と従業員という関係で知り合った女性と交際を開始し、「子どもを産んで欲しい。」「家を新築して一緒に住みたい。」などと言って5年以上も交際を継続した行為に対し、女性の人生に悪影響を及ぼし、精神的苦痛を負わせた。」
平成27年1月7日
(東京地裁)
慰謝料100万円
「妻との離婚調停が不調となり別居中であった被告(男性)が、職場の同僚女性に既婚者であることを隠して交際を申し込み、妻との関係が好転し性交渉を持った以降も、同僚女性との関係を維持し、別れ話を持ち出されても、「大切な●●ちゃん」「愛しているよ」などとメールを送り、性的関係を維持することを望み、同僚女性が結婚を念頭において交際していることを知りながら、既婚者であることを隠し、虚偽の事実を述べ、結婚を望む同僚女性に対しても曖昧な態度をとり続け、性的関係を続けたものであり、このような、被告の一連の言動は、遅くとも、被告が配偶者との関係を修復し性交渉を持った以降は、同僚女性に対する関係で、その人格権を侵害する不法行為を構成するというべきであり、同僚女性が受けた損害を賠償する責任を免れない。」

慰謝料の金額については、交際期間が3年以上の長期だと200万以上の高額になることが多いようです。
会社の同僚である等、既婚者であることを知らないことについて過失があったとみなされると減額評価される場合もあるようです。
20代~30代の結婚適齢期とされる貴重な10年間を奪われた場合や、交際期間中に妊娠中絶をしていた場合などは、悪質な事情であると評価され、300万円~500万円などの高額になることも多くなります。




慰謝料請求が認められない場合

意思に反して相手と関係を持ったとしても、以下のいずれかに該当する場合には、慰謝料請求は難しいです。

  1. プラトニックな関係だった
  2. キスやハグなどの接触のみだった
  3. 最初から既婚者だと知っていた
  4. 注意すれば容易に相手が既婚だと認識できた

最初から相手が既婚者であると知っていた場合

最初から相手が既婚者であると知っていた場合には、原則として慰謝料請求は出来ませんし、逆に、不貞の共同不法行為者として、相手の配偶者から慰謝料請求される危険があります。
ただし、相手が既婚者だと知っていた場合であっても、例外的に、加害者の悪質性が大きい場合には、貞操権侵害と認めて慰謝料の支払を命じた裁判例もあります。

相手が既婚者だと知っていたが貞操権侵害と認めた裁判例
昭和44年9月26日
最高裁
判決 慰謝料60万円
「男性に妻のあることを知りながら情交関係を結んだとしても,情交の動機が主として男性の詐言を信じたことに原因している場合で,男性側の情交関係を結んだ動機,詐言の内容程度及びその内容についての女性の認識等諸般の事情を斟酌し,女性側における動機に内在する不法の程度に比し,男性側における違法性が著しく大きいものと評価できるときには,貞操等の侵害を理由とする女性の男性に対する慰謝料請求は許される。」

この事案の場合の違法性の判断要素は以下のとおりです。

  1. 男性が結婚をほのめかしていた
  2. 女性が若年で思慮が十分でない
  3. 男性から積極的に交際を持ちかけた
  4. 男性にとっていわゆる「遊び」であった



慰謝料請求の通告書面や示談書

性的意思決定の自由の権利を侵害され、相手に慰謝料請求の通告書面を送付する場合には、「本人限定受取郵便」を利用して、相手の配偶者や家族に知られないようにしたり、勤務先住所などへ「親展」を付して郵送するなどの措置が重要になります。

また、当事者間で示談が成立し示談書を取り交わすにあたり、もしも既婚者の配偶者に2人の関係を知られていない場合においては、配偶者が事実を知ることが無いようにする口外禁止や情報漏洩防止義務の条項を定めたり、仮に配偶者に知られて慰謝料請求された場合には、既婚者の側がその支払責任を負う旨を定める等も重要になります。

弊所は、行政書士と弁護士の合同事務所であり、他の都道府県にも男女トラブルに精通した弁護士とのネットワークがあるため、幅広い地域に対応が可能ですので、まずはお気軽にご相談下さい。





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