親権者の変更について
親権者の変更について
離婚の際に未成年の子どもがいる場合には、子供を監護養育する「親権者」を父母のどちらか一方に決めなければなりません。 この親権者は、父母の合意で定めることができます。 しかし、離婚後に再婚や海外赴任、病気や怪我、虐待や育児遺棄、その他様々な事情によって親権変更をしたいという場合があります。
離婚後の親権者の変更は、子の父母の合意があっても認められず、必ず家庭裁判所の調停・審判によって行う必要があります。 変更を求める側が、相手親の居住地を管轄する家庭裁判所に、親権者変更調停事件として申立を行います。 もしも親権者が行方不明等で調停に出席できない場合などには、家庭裁判所に親権者変更の審判を申し立てることができます。
調停手続き
親権者の変更は、子どもの健全な成長を助けるようなものである必要があるので、調停手続では、申立人が自分への親権者の変更を希望する事情や現在の親権者の意向、今までの養育状況、双方の経済力や家庭環境等の他、子の福祉の観点から、子どもの年齢、性別、性格、就学の有無、生活環境等に関して、事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出するなどして、子どもの意向をも尊重した取決めができるように、話合いが進められます。
審判手続き
話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始されます。 家庭裁判所調査官が調査を行って作成した「調査報告書」を参考に、裁判官が、一切の事情を考慮して「子の利益に適うことであるか」という観点から判断し、審判の決定を下すことになります。
親権者変更の判断基準
監護環境の変化は子に重大な影響を及ぼすことになるため、積極的に変更すべき特段の事情が無い限り、現状の監護環境を変えない方が望ましいとする「現状維持の原則」というものがあります。 そのため、裁判所が親権変更を認めるのは「親権変更を認めるだけの特別な事情がある」と認められた場合に限られますので、決して簡単ではありません。
一般に、子供に対しての肉体的・精神的な虐待があったり、食事を与えない・身の回りの世話をしないなどの育児遺棄があったり、深刻な病気や怪我、精神疾患などによって子育てが困難と思われる事情があると、親権者としてふさわしく無いと考えられます。
また、乳幼児期から9歳程度までの幼いうちは、母親の方が望ましいとする「母性優先の原則」というものもあります。 10歳を超えるくらいの年齢になると、ある程度の判断能力があるとみなされるため、子供の意見も判断材料にすることがあるといわれています。 また、子供が15歳以上の場合には、子供本人の意思が非常に大きく尊重されるといわれています。
調停が成立し、または審判の決定により、親権者が変更された場合は、10日以内に戸籍法による届け出をしなければ親権が変更されなくなります。
認知した父または離婚後の実父を指定する場合
なお、認知した父親を親権者に指定する場合、および、離婚後に産まれた子供について父親を親権者に指定する場合については、父母が合意すれば届出することが可能で、家庭裁判所での手続きは不要です。
親権者が死亡したとき
親権者が死亡したときは、必ずしも生存している他方の親が親権者になる訳ではありません。 家庭裁判所への親権者変更の申立、または未成年後見人選任の申立によって、子どもの福祉の観点から、審判がされることになります。
なお、離婚に伴って親権者となった親は、もしも子どもが成年になる前に自分が死亡した場合に備えて、あらかじめ遺言によって未成年後見人を指定しておくことができます。 未成年後見人は、親権者に代わり、未成年者の法定代理人として、より大きな責任(善管注意義務)を負います。
未成年後見人に就いたときは、10日以内に市区町村役所へ未成年後見人の届出を行わなければなりません。