養育費の決定
協議による決定
養育費は、子どもが日々暮らしていくなかで、その都度生じる生活費です。 支払う金額や支払う期間などについて、原則として子の父母間の協議によって決めるものです。 法律の定めや公序良俗に違反しない限り、夫と妻の間で自由に取り決めることが出来ます。
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。 |
支払方法
支払のサイクルは、通常、収入が生じるタイミングに合わせて、毎月1回ずつという形が多いです。 年金所得者の場合は、2ヶ月に1回ずつという取り決めをすることも多いです。
支払期間中に事情変更が生じた場合には、増額請求や減額請求をすることが出来ます。 事情変更とは、事故や病気、災害、失業、転職、再婚、扶養家族の増減、養子縁組、物価の変動、などのことです。
扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。 |
一括払
子の父母双方が合意するのであれば、全期間分を一括払と定めて合意をすることも可能です。
一括払いの定めをする場合には、色々な問題が生じる恐れがありますので、注意が必要です。 ■注意すべき事項 ・もしも途中でお子さんが他界してしまった場合に清算はどうするのか ・支払義務者が他界した場合には、どうするのか ・再婚や養子縁組で一次義務者や負担すべき額が変わった場合はどうするか ・将来的に物価や収入の大きな変動が生じた場合はどうするか ・ケガや病気、進学、などの特別費の負担が必要となった場合にはどうするのか
なお、調停などの裁判手続きや公正証書においては、特別な事情が無い限り、 裁判所や公証人は一括払いを認めない傾向にありますので、注意が必要です。
■特別な事情には、以下のようなものがあります。 ・支払義務者が重度の怪我や病気によって社会復帰できる可能性が少ない ・支払義務者に死期が迫っていて、長期に渡る支払に堪えない ・長期服役や長期海外赴任などで定期的な支払が難しい ・支払義務者に支払能力がなく、その親族が代位弁済する場合 ・信託制度を利用し、義務者は一括払するが、権利者には定期給付される場合
■一括払いの取り決めをする場合の注意点 ・養育費の内訳根拠(月額および回数・対象期間)を明確にしておくこと ・事情の変更が生じた場合に関する定めをしておくこと ・中間利息控除をどうするかについても記載しておくこと ・養育費の管理方法や支出について定めておくこと
メリット | ・養育費の不払や滞納、送金忘れ、送金不能などの問題を防げる ・元配偶者間での関わりを持たなくて済む ・離婚後の生活の不安が払拭できる ・不払が原因での強制執行の手続きをする手間が省ける |
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デメリット | ・贈与税の課税対象となるおそれがある ・将来、不測の事態が生じた場合の増額請求や減額請求が難しい ・本来の総額よりも少ない金額となる場合がある |
贈与税の問題
養育費や婚姻費用は、扶養義務の履行を目的とした金銭給付です。 そのため、原則として贈与税が非課税とされています(相続税法第21条の3第1項第2号)。 ただし、「必要な都度、直接必要と認められる金額を支払う」ことが条件とされております。 また、預貯金された場合や株式・家屋の購入資金に充当した場合なども対象外とされております。 よって、贈与税が課税される可能性があります。
法第21条の3第1項の規定により生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、 生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする。 したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金 に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして 取り扱うものとする。 |
追加請求
当事者間の合意で、追加請求を禁ずる定めをしていない場合、もしくは追加請求を認める定めをしてる場合であれば、 正当事由があれば追加請求は認められます。
なお、きちんと計画的に使用しなかったために使い尽くして無くなってしまったという事情では、追加請求は認められません。
子の親権者が受領した養育費を計画的に使用して養育にあたれば養育費の不足を生じなかったにもかかわらず、 単に無計画に養育費を使い尽くしたような事情の下では、養育費の一括払をする旨の調停成立後にその内容を 変更すべき事情の変更が生じたとはいえないため、養育費の追加請求は認められない。 |