不倫相手との慰謝料の示談書
示談とは?
示談とは、法的な紛争や問題を解決するために、訴訟などの裁判手続きによらずに当事者間で合意を得て解決することをいいます。 示談の成立は契約の成立であり、その合意内容は当事者双方を拘束します。 訴訟における時間や費用・労力などの負担を回避することで早期の解決や原状回復を図ることが期待できるというメリットがあります。 また、法の定めや公序良俗に反しない限り、通常の裁判で下される条件とは異なる条件内容での合意も可能ですし、裁判では強制出来ないような条件を定めることも出来ます。
示談書とは?
「示談書」とは、示談によって合意された条件内容を記載した文書のことです。 当事者間の合意を文書化することで、合意をした事実を証拠として残すことが出来ますので、相手方が約束を履行しない場合に法的手続きを取りやすくなります。 合意した条件や取り決めを明確に記録することで、内容に関する疑義や誤解が生じるリスクを予防し、将来的な紛争予防や不履行リスクを減らすメリットがあります。 なお、和解書、合意書、などの異なる表題の場合でも文書の法的な効果は同じですが、「示談書」は事故や事件に関する解決という意味合いで使われることが多く、和解書は主として民事紛争解決の場合に使用され、裁判所が関与して「和解調書」として作成されることもあります。
示談書と誓約書・念書の違い
誓約書や念書というのは、主として、一方が相手方に対して、将来的に特定の行為をしないことを約束して差し入れるという性質の文書です。 示談書というのは、紛争の当事者間において紛争解決の合意をしたことを文書化して署名捺印して取り交わす文書です。 つまり、誓約書や念書というのは一方通行的に今後将来にわたって約束を守る義務を宣言するものであり、必ずしも相手がそれで了承して解決していることにはならないということです。 よって、きちんとした紛争解決という意味では示談書を作成することがより最善であるということになります。
不倫の示談とは?
不倫の示談とは、不倫された被害者と、そのパートナーの不倫相手との間で取り交わす示談のことをいいます。 通常の示談書では、原因事実の概要、慰謝料の支払やその他の補償についての定め、当事者間で解決したことの確認、などの条項が入ります。 不倫の慰謝料などに関する示談書においては、前記の他、今後の誓約事項(接触禁止や守秘義務など)と違反した場合の罰則、などの取り決めも行うことが多いです。
不倫の示談書に記載する項目
不倫の示談書に記載する項目は、主として以下のようなものがあります。
・不倫行為の事実の確認、および謝罪 |
・慰謝料(示談金)の金額、支払期限・方法など |
・不貞や接触接近しない旨の誓約(※離婚しない場合) |
・違約時のペナルティの定め |
・守秘義務、プライバシー侵害や名誉棄損の禁止 |
・弁済完了までの連絡通知義務 |
・共同不法行為における負担割合や求償権に関する定め |
・公正証書作成に関する合意 |
・清算条項 |
示談書の作成や締結にあたっての注意点
(1)当事者本人が署名捺印する |
---|
氏名部分が印字であったり、代筆での署名だと、当事者本人が示談したことの証拠として不十分であるため、本人が自署および捺印することが大事です。 |
(2)法律の定めや公序良俗に反していないこと |
離婚後にまで接近接触を禁じるとか、実現不可能な金額の支払や行為の約束は、原始的不能であるとして無効となるおそれがあります。 |
(3)条項の漏れや記載の不備が無いこと |
支払遅延や誓約違反があった場合の定めが無かったり、もしくは記載の仕方が不明瞭ないし不十分なために、解釈に疑義の生じることがないよう、気をつける必要があります。 |
(4)長期化しないように心がけること |
あまり感情的になって厳しい要求を突き付けたり、何度も条件変更を求めたりなど、時間を長引かせてしまうと、相手にも敵対心や反発心が起こり、合意がまとまらずに破談するケースもあります。 |
相手と非対面で取り交わしたい 不倫の示談書の場合、お互いに、相手方と顔を合わせたくない、または時間や場所の都合が合わない、 もしくは姿を見てしまうことでかえって話がこじれてしまうす危険、等の理由から、直接の対面をせず 郵送の往復で示談書を取り交わすことは非常に多いです。
相手に自宅住所を知られたくない 住所欄の代わりに生年月日などの本人特定情報を明記し、弁護士や行政書士を経由して郵送で取り交わ しを行うという方法があります。
不倫の示談書の文例
示 談 書 | ||||
●● ●●(以下、「甲」という)および■■ ■■(以下、「乙」という)は、本日、当事者間で以下のとおり、合意した。 | ||||
第1条 | (不貞事実の確認) | |||
乙は、甲に対し、甲の夫である●● ○○(以下、「丙」という)と、甲と丙が婚姻関係にあると認識しながら、令和●●年●月より、反復継続して不貞行為に及んでいだ事実を認める。 | ||||
第2条 | (謝罪) | |||
乙は、甲に対し、自らの行動により、甲を深く傷つけ、多大な精神的損害を生じさせたことを認め、甲に対して謝罪する。 | ||||
第3条 | (示談金) | |||
乙は、甲に対し、前条に対する示談金として、金▲▲▲万円の支払義務のあることを認め、以下のとおり、甲の指定する金融機関の預金口座へ振込送金の方法により支払う。 | ||||
(1) | 支払方法 | |||
令和▲▲年▲▲月から令和▲▲年▲▲月まで、毎月末日限り、金▲▲万円宛▲▲回払い。 合計金▲▲▲万円也。 | ||||
(2) | 甲の指定する金融機関の預金口座 | |||
金融機関名: 支 店 名: 預金種別 : 口座番号 : 口座名義 : | ||||
(3) | 支払に関する費用(振込手数料)については、乙が負担するものとする。 | |||
(4) | 乙は、金融機関が発行する振込明細書をもって領収証の発行に代えるものとし、甲は、個別に領収書を発行しないものとする。 | |||
2 | 乙は、本件債務が乙丙の共同不法行為にかかる、乙固有の負担割合部分であることを認め、本件債務の全部または一部を丙に負担させないことを約束する。 | |||
3 | 甲および乙は、別途、甲が丙に対して慰謝料請求することを妨げないことを確認する。 | |||
第4条 | (遅延損害金) | |||
乙が、第3条に定める分割金の支払いを怠った場合、乙は甲に対し、残元本に対し、年14.6%の割合による遅延損害金を付加して支払う。 | ||||
第5条 | (期限の利益の喪失) | |||
乙は、第3条に定める分割金の弁済が完済に至るまでの間、乙につき以下の各号に定める事由が生じた場合には、何らの通知、催告がなくとも当然に期限の利益を喪失し、ただちに既払金を除く残額を支払わなくてはならない。 | ||||
(1) | 乙が第三者から差押・仮差押・仮処分または強制執行を受けたとき、もしくは競売の申立または破産手続開始の申立を受けたとき | |||
(2) | 自宅の住所や連絡先電話番号、勤務先を変更した場合において、変更前、または変更後速やかに、変更後の新住所及び連絡先電話番号並びに勤務先の名称、所在地及び電話番号を、甲に通知しなかったとき | |||
(3) | 第3条に定める分割金の返済を2回分以上怠り、その額が金●●万円に達したとき | |||
(4) | その他本契約の条項に違反したとき | |||
第6条 | (私的接触禁止および違約金の定め) | |||
乙は、本契約締結日以降、乙から丙への私的な接触を一切もたないこと約束する。 万一、乙がこれに違反した場合には、乙は甲に対し、以下のとおり違約金を支払うものとする。 | ||||
(1) | 電話やメール、SNS、手紙、面会その他方法の如何を問わず、私的な接触を行なった場合 1回につき金10万円 | |||
(2) | 不貞行為に及んだ場合 1回につき金100万円 | |||
第7条 | (誓約条項) | |||
甲と乙は、以下のとおり誓約する。 | ||||
(1) | 甲乙は、相互に、相手方の私生活や業務の平穏を害するような言動を行わない。 | |||
(2) | 甲及び乙は、本示談書に定める内容に関し、第三者に告知、開示、漏えい、または当該内容を第三者が容易に想起し得るような言動をしない。 | |||
第8条 | (清算条項) | |||
甲と乙は、本示談書に定める他、損害賠償その他名目の如何を問わず、何等の債権債務が存在しないことを相互に確認する。 | ||||
以上、本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自署名捺印の上、各1通宛を保有する。 | ||||
令和 年 月 日 | ||||
(甲) | 住 所 | |||
氏 名 印 | ||||
(乙) | 住 所 | |||
氏 名 印 | ||||