内縁・事実婚・結婚
内縁とは
内縁とは、婚姻の届出はしていないために、法律上は夫婦と認められていないが、双方が婚姻意思を持ち、法律上の夫婦と同然の同居生活をしている実態があること、対外的にも夫婦として認識されていることをいいます。
同棲は、共同生活という点は同じですが、結婚意志を持っていない恋人同士だったり、友人同士のルームシェアなども含まれる点が大きく違います。
婚姻の届出をしないで内縁関係を選択している理由としては、再婚禁止期間のため、未成年の子が自活するまで環境を変えないでおきたいため、等の一時的な理由の場合もあれば、両親の反対、相手方親族間との不和、結婚した事実を知られないようにしたい、名字を変えたくない、等の事情で留保している場合、もしくは、同性間や重婚的関係のため婚姻出来ないというケースもあります。
※民法改正により令和6年4月1日以降の婚姻については「再婚禁止期間」が廃止となります。内縁と事実婚の違い
昭和23年の民法改正までは、明治時代の民法による「家制度」があり、両性の意志の合意だけでは婚姻することが出来ない「婚姻障害事由」というものがありました。 まず、婚姻をするためには戸主(家長)の同意が必要で、さらには男は30歳、女は25歳までは親の同意も必要でした。 また、法定家督相続人(主として長男・長女などの跡継ぎ予定者)は、その家の全ての財産や権利義務を承継するため、他家へ入ることができませんでした。 そのため、事実上は夫婦共同生活の実態があっても、婚姻の届出が出来ない状態の妻のことを内縁の妻といいました。 一方、婚姻によって生じる様々な制約や義務、責任などから、自らの意志で婚姻届出をしないことを選択する場合もありました。 名字を変えること、他家の墓に入ること、相手親族の介護義務、連れ子の養育義務、相続争い、等々。 このような、事実上の夫婦共同生活をしながらも、婚姻の届出をしない夫婦のことを事実婚といいました。 以上のとおり、現在では、内縁と事実婚には明確な違いはありませんが、歴史的な背景事情によって別々の呼称が生じたといわれています。
内縁(準婚姻関係)の要件
内縁(事実婚)とは、法的には準婚姻関係(婚姻に準じる関係)として、以下の要件を満たすものをいい、戸籍法上の夫婦と同等の保護がなされます。
お互いに夫婦であると認識している |
共同生活を送っている |
対外的にも夫婦と認められている |
そして、以下のような、法律上の夫婦と同様の義務も負います。
同居して協力し助け合う義務 |
配偶者以外の異性と性的関係を持たない義務 |
生活費の分担義務 |
内縁と結婚との違いとして、主要なものは以下のとおりです。
法婚姻 | 内縁関係 | |
名字 | 必ず改姓される | 改姓されない(出来ない) |
戸籍 | 同一の戸籍となり「夫」「妻」と記載される | 別々の戸籍となり、記載されない |
住民票 | 続柄に「妻」「夫」と記載される | 続柄に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載可能 |
社会保険 | 第3号被保険者として扶養に入れる | |
遺族年金 | 受給できる | |
配偶者控除などの税の優遇措置 | 優遇を受けられる | 優遇を受けられない |
婚姻費用分担 | 請求可能 | |
慰謝料 | 請求可能 | |
財産分与 | 請求可能 | |
子の親権 | 父母ともにある | 父にはない(父母の協議で父を親権者と定めることは出来る) |
子の養育義務 | 父母ともにある | 父にはない(認知または養子縁組をした場合にはある) |
相手親族の介護義務 | ある | ない |
病院や介護施設 | 親族のみ面会可能な場合にも支障がない | 親族のみ面会可能な場合、支障をきたすことがある |
財産相続 | 相続できる | 相続出来ない |
関係解消 | 当事者の合意か、裁判による判決が必要 | 別居によって解消される |
相手親族との婚姻 | 不可能 | 可能 |
内縁のメリット
夫婦別姓でいられる | ・名字に特別な愛着を持っているから ・希少な名字であるため無くせくない ・家業承継のため名字を変えられない ・アイデンティティーとして外せない ・全てにつき対等関係を維持するため |
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名義変更の手続きが不要 | ・運転免許証 ・パスポート ・銀行、証券会社などの口座やカード ・マイナンバーカード ・クレジットカード ・保険の契約者、被保険者、受取人 ・携帯電話 ・保有資格 |
資産や収入を分離できる | ・先祖から代々引き継いできた資産 ・親族との相続トラブル回避のため |
内縁は改姓する必要が無い、夫婦別姓を実現できる、ということをメリットと感じる方もいます。 逆に、同じ名字になりたくてもなれない、名字が違うことであらぬ詮索を受ける可能性がある、ということをデメリットと感じる方もいます。
内縁は相続権が生じないため遺産を受け取ることが出来ないですが、親の介護義務の負担も生じないし相手方親族との相続トラブルに巻き込まれるリスクも無いということでもあります。
戸籍に記載されないということは、関係解消されても戸籍にバツ(×)の記録がされないということでもあります。 内縁は関係を解消をすることは容易ですが、内縁関係があった事実を証明することが難しいという問題もあります。
その他、税法上の優遇は受けられず、住宅ローン(ペアローン)や教育ローンを組むことが難しかったり、各種の入会の申込み審査が厳しくなったりなど、想定をしていなかった問題や不都合が生じる可能性もあります。
内縁関係において、その法的な不備や不利益を補完ないし解消するためには、準婚姻契約書や任意後見契約書、遺言書、などを作成して重要事項を定めておくことが重要になります。 これによって、事実上の夫婦であることの証明書類として活用したり、多くの場合で利益の保護や不利益の解消を図ることが出来ます。