養育費の増額・減額の要求
養育費の増額・減額
養育費とは、未成熟な子が自立するまでに必要となる衣食住費、教育費、医療費、などの日々生じる生活費のことです。
親は、自分の子どもに対して、扶養義務を負っています。 離婚や非婚、親権の有無にかかわらず、子どもの親である以上、法律上の扶養義務は無くなりません。
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。 |
当事者間の協議で定めた養育費、または裁判所の審判や判決によって確定した養育費であっても、その後に事情変更が生じた場合には、どちらからでも、変更を求めることが可能です。
もちろん、一度決めた養育費については法的な拘束力があり、一方の当事者側の事情で勝手に変更することは出来ませんので、当事者間の協議によって新たに合意をして変更するのが原則です。
協議の方法としては、直接の話し合いで決めるか、話し合いが出来ない場合や連絡が取れない場合には、手紙や内容証明郵便による通知書面などで変更の希望条件を伝えて回答を求めるという方法もあります。
当事者間の協議で合意を得られない場合、あるいは協議そのものが困難な場合には、家庭裁判所に養育費増額(減額)請求の調停申立をすることが出来ます。 調停では、裁判官や調停委員が間に入って話し合いが進められ、当事者双方で合意が成立すれば調停成立となって終了します。 合意が出来ない場合には、家庭裁判所の審判に移行し、裁判所が審判し決定を出すことになります。
扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。 |
扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。 |
家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。ただし、第二百七十七条第一項に規定する事項についての家事調停の手続においては、この限りでない。 |
養育費の変更
養育費の変更には、「金額の変更」や「終期の変更」等があります。
金額の変更
定期的に支払う金額の増額または減額という変更のことです。 毎月1回ずつの支払が大半ですが隔月払や賞与時加算などの変則払とすることもあります。 支払方法としては振込送金が一般的ですが、現金手渡しや電子マネー決裁
終期の変更
何時まで支払うかという支払の終了時期の変更であり、基本的には「子どもが成熟するまで」として原則は20歳までとなりますが、大学卒業まで、あるいは高校卒業まで、等とする場合もあります。 子どもが重度の障害を抱えている等の事情によって終期をかなり先に設定をしたり、あるいは死亡するまでと定める場合もあります。
増額・減額の判断基準
当事者の協議によって合意することが出来ない場合、裁判所の決定や判決で認められるのは、養育費を決めたときには予測できなかった事情の変更があった場合に限られます。 単に生活費が足りないとか、支払が大変という理由だけでは認めてもらえません。
(1) | 父母の一方または双方の収入の増減(倒産、リストラ、昇給) |
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(2) | 父母の一方または双方の大きな怪我や病気(介護負担増大や労働能力低下) |
(3) | 父母の一方または双方の家庭環境の変動(再婚、養子縁組、次子出産、など) |
(4) | 子どもの進学などに伴う教育費の増減 |
(5) | 子どもの怪我や病気(或いは回復)による医療費や介護負担の増減 |
(6) | 物価や公租公課の大幅な変動、貨幣価値の変動 |
(7) | 天変地異、災害による収支の大幅な変動 |
養育費の増額
義務者(支払う側)の収入増加 支払う側が昇進・昇格などによって収入が大幅に増えた場合など
権利者(受け取る側)の収入減少 病気やケガで働けなくなった場合、倒産やリストラなどで仕事を失った場合など
子供の教育費の増加 子どもが私立学校や大学への進学、習い事、留学などを求めていて、両親の学歴、収入その他の事情から、 その負担が相当であると認められるとき
子供の医療費や介護負担の増加 子供が怪我や病気による疾患や障害の発生、発達障害の判明、等によって、看病や介護が必要になり、 収入減少や介護負担費用の増大などが生じた場合
事情変更 物価の上昇や増税、災害、その他の社会情勢の変化など、合意時点には予期していない事情が生じて 生活の維持が難しくなった場合
なお、東京高等裁判所においては、子どもが15歳に達したことを「事情変更」と認めて増額の決定をした事例があります。
「標準算定方式を採用する場合,子が15歳に達すると生活費指数が増えるのであるから,当事者双方において子が15歳に達した後も養育費を増額させないことを前提として養育費の金額について合意した等の特段の事情が認められない限り,子が15歳に達したことは原則として養育費を増額すべき事情の変更に該当するものと解され,本件においてそのような特段の事情を認めるに足りる資料がないから,長男が15歳に達したことをもって平成28年調停で合意された養育費を増額すべき事情の変更に当たると認めるのが相当である。」 |
※認められない場合 当初に決めた養育費の金額が、その当時の算定表の基準を大きく上回っていた場合には、さらなる増額の請求を認めてもらうのが難しくなる場合もあります。
2019年12月から裁判所が公表している算定表が変更になり、旧算定表によって算出された養育費の額は、同じ収入や子どもの年齢・人数の場合、新算定表によって算出された養育費の額の方が高くなることが多いのですが、このことは「事情変更に該当しない」という旨が裁判所から正式にアナウンスされていますので、単に「算定表の改定」を理由としての増額請求は認められません。養育費の減額
受け取る側が再婚、再婚相手の子どもと養子縁組 受け取る側の再婚相手と子どもが養子縁組をすると、再婚相手がその子の一次的な扶養義務者となるため、減額または免除の理由となります。
受け取る側の収入が大幅に増えた 受け取る方がパート勤務から正社員となり収入が増えた場合などは減額理由となります。
支払う側の扶養家族が増えた 支払う側が再婚、連れ子との養子縁組、新たに子が誕生、など扶養する家族が増えた場合は減額理由となります。
※認められない場合 当初に決めた養育費の金額が、その当時の算定表の基準を大きく下回っていた場合には、さらなる減額の請求を認めてもらうのが難しくなる場合もあります。